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sailor 貴帆 北田浩  Never Stop The Challenge

2024-01-03

小笠原レース「船上のリアル」 vol.2

第三話 「小笠原レーススタート前」

2023/04/22 艇長会議など

明朝は小笠原レースのスタートだ。

前夜祭はもちろんの事、数日前からアルコールは飲んでいない。もちろん彼女らにも厳戒令を出している。

吉富、宇田川、私の三人は前夜祭を終えて宇田川は近くの自宅に、吉富と私は浦賀の泊地に戻り船内泊することとした。

夜半、風が泣き出した。

なぜだろう?

ふと思い出す。

2016年Plymouthのスタートが強風だった。

彼女らは緊張しているだろうな?

2023/04/23 スタート海面へ

05:30集合

06:00出港

浦賀ヴェラシスからの出港が少し遅れたがスタート海面の小網代沖は近いから問題ない。はず・・・

風速20ノット前後のダウンウインド、ステイセルとメイン2ポイントリーフで2時間あれば着くだろう。

出港して小一時間、小網代浮標に向けて転針ジャイブ・・・

何かがおかしい??

ポートサイドのレイジージャックのダイニーマが切れているのが目に入った。

やばいカモ・・・

フランスでの活動中はコーチのJeanと口論しながらもパーツを一つでも減らすためにリングは使わずにダイニーマダイニーマでレイジーシステムを組んでいた。jeanは切れないと言い張っても心配性の私は2年に一回は新品に張り直していたのだが、そう言えばしばらく交換していなかった、4年目か?

貴帆はブームバングが無くレイジーで吊っているだけだから片方が切れたらどのような状況になるか想像してみて欲しい。

40フィートにしては巨大な4Pリーフ付のメインはレイジー無しで走り切ることが出来ないわけではないがリーフの度にブームが落ちてキャノピーをヒットしないように緊張の続く重労働になってしまう。

ぞっとする。どうしよう?

近くの泊地を探してマスト作業してレイトスタートか?

安全に完全に修理できる浦賀まで戻るか?

流石に往復3時間と1時間の作業ならレースには致命症になる。

面倒だからレースやめよっかなとテロップが流れたが・・・

小網代の岸に近づくと風も波もそれほどでは無い。

真乃登れ!

る?

レース前にマスト登りは宇田川、潜水作業は私と分担していたのだが・・

上のスプレッターに空いてるホールからドックボーンを使ってダイニーマを吊り下げている。レージーの根本は切れていない。下のスプレッターより低い位置でぶらぶらしている切れたダイニーマをジャンプして掴み寄せた。

スタート前レイジージャックの修理のため真乃がマストに登る
スタート前レイジージャックの修理のため真乃がマストに登る

切れている上側のエンドに輪っかを作り下側の切れたらところに長めのダイニーマを繋いでその輪っかを通し下に引き寄せてブームを持ち上げる作戦に決めた。

段取りが良く無く一発で決まらず宇田川を3回引き上げる事になってしまったが、何とか繋ぎ止めホット一息、あくまでも仮設だから最後まで持つかな?

どこかでしっかり繋ぎ直せるかな?

風が上がってくるだろうから無理かな?

ストームジブとトライスルをあげてのチェックインには十分間に合う時間が残った。

貴帆はメインを4Pに入れトライスルの代わりとする。

Class40貴帆でクルー(5人と4人)2回、imoca60ラ・ミカリーン(LA MIE CÂLINE) でアルノー(ARNAUD BOISSIÈRES) とダブルハンドで1回ファストネットレースに出た経験からスタート前のストームジブとトライスルをあげてチェックインする事の安全に対する取り組みに共感していたこともありレース委員会には同様の仕組みを取り入れることを推薦していた。

ストームジブとトライスルをあげて各艇エントリー
ストームジブとトライスルをあげて各艇エントリー

第四話「レーススタート」

スタート直前の気象解析

ソースはGFS、ブルドックでもカゴメでもない。(日本人にしかわからないオヤジギャグ🤣)

日本の沿岸気象は気まぐれで当たるも八卦当たらぬも八卦?で難しい。

実際の風軸は前側に15度ほどズレていたがスタート直後は概ねミディアムスピンがベストチョイスであった。このセイルは20〜30ノット用のジェネカーだが軽風ではそこそこ上れるのだ。

しかしお嬢さんらの4、5回の練習の中で一回デモンストレーションしたくらいだから本番でセイルセットして、また吹き上がったらトラブルなく下ろせるか?

結構不安なことと風が横に回り吹き上がって行くことを考えれば多分確実に使えるファーリングA5で走り出しジワジワとフリートの前に出て風が上がるのを待ちA5→ソレント(No1)→メイン1P→2P→ステイセル(No4)→3Pで爆走サバイバルモードで小笠原に突っ込むプランがベターと判断。吹き出してからお嬢さん2人でステイセルをハリヤードロックでセットするのはきっと無理だろうからスタート前からホイストしておく事にした。風速は10ノット弱だから本来ソレントとフルメインでマニューバしてスタートするところを小回りは効くが艇速が犠牲になるステイセルでスタート、宇田川ヘルムと吉富ピット、私は喋る船上カメラマンでジャストスタートを切る。

加藤翔氏撮影

その後のすぐにA5をオンデッキするも吉富がタックラインのセットでもたついたのでバウまで行って声がけだけで指導したが手は出していない。選手宣誓。観覧艇から証拠写真を撮られてるのも見えていた。

スタートは良かったがパワー不足のA5であったことから4艇に先行を許すも着実に付いて行けてる状況から、もしミディアムスピンを使えていれば最初から最後まで先頭を走っていた事だろう。

2人の緊張がほほくれるようにじっくりと走らせていくことにした。

この時点ではファーストホームは狙えるだろうが修正でビリかもと思っていた。

今更IRCやハンデキャップや艇の性能性格について語る気にはなれないが、フランスを出る前にクラス40でレーティングを取得してみたいと言い出した私にフランス人の方々は???✖️3くらいの反応であった。

A5のままで広島のゼロを上追越し、振り返ればゼロの乱れたジェネカーが収まらずバーストしたように見えた。

あれ?私達のせい?ごめんね。

レース序盤は風速20ノット以下で2人のコンビネーションで確実に出来そうな事だけを選んで走らせた事もありトラブルなく先行艇を確実に抜いていった。

この先A2とMediumスピンは無いと踏んで船内後方(クルーザーならクウォーターバース)にぶち込んだ。

さあ、これからどこで仕掛けていく事になるか?

レース直前のシミュレーションを2人に話していた。ザックリとだが、パフォーマス昼夜80%で走り切れれば2day10時間程度、85%なら1DAYと22時間でフィニッシュ、ファーストホームは出来るだろう。ただし80%程度ならハンディキャップではビリの可能性大。80%とは私が初めてソロレースに臨んだ時に目標としたパフォーマンスで2人には概ね80%出せるであろうセールコンビネーションチャートを説明してピットに貼っておいた。

私はRDR2018前にはSoloでも95%以上は出せていたのだが今の2人では80%も厳しいかもしれないな・・・

(第5話に続く)