toggle

sailor 貴帆 北田浩  Never Stop The Challenge

2024-01-01

小笠原レース「船上のリアル」 vol.1

小笠原レース2023「船上のリアル」Vol.1
貴帆は小笠原レース2023で優勝と小笠原村長杯ラインオナー賞を獲得。宇田川真乃(左)と吉富愛(右)と共に。

第一話 「prologue」

いずれにせよ
彼女らにとっての船上は
戦場であった事に違いないだろう。

記憶が薄れないうちに書き留めておこうと思うも貴帆の修繕の手配やらで全く時間が足りない。

昨年(2022年)10月に貴帆をフランスから連れてきて以来、中々整備が進まず元の走りを取り戻すには至っていなかった。

また日本でレースをする事は考えていなかった。

児玉さん大村さん鈴木さんと会合を持つ機会があり、日本で由緒正しきカテゴリー2のレースを開催出来ないものか意見交換していたところ、途絶えていた小笠原レースをカテ2のレースとして再開しようでは無いかということに話しが進んでいった。

セイルオンの池田さんからは100万円のスポンサードの提案があった。

ただし条件付きで「貴帆が参戦すること」と笑顔で恫喝される

うっ

準備が出来ていない貴帆をレースに出すことへのためらいもあった。

フランスから連れ帰る前にメインとMediumスピンを新調したのだが、その他は一二度大破して大修理した手負いのセールばかりだ。特に強風用のステイセルが酷い。

数人のOceanBootCampメンバーに手伝ってもらいながら貴帆のチューニングを少しづつ詰めていた。

一人でやっていてはいつ終わるかわからないことと

一人では出来ないことを

ひとつずつ ひとつずつ・・・・

リグのテンションの微調整・・・・

上下のランナーのテンションバランスはほぼ大丈夫

軽中風域までは準備が出来てきたな。

これが強風域でも行けてる状態なのか?

他に不具合が出てこないのか? 

電池交換してフランスから戻ってきたオーパイのリモコン(実際戻って来たのは別個体)の感度が悪く、Soloで使うには危ないな・・・

OceanBoot Camp蒲郡〜浦賀で協力してくれた横山くん、篠島さん、Petit Boot Campで協力してくれた鈴木裕介くん、守屋有紗さん、浦賀での整備などで協力してくれた上松さん、堤くん、村瀬さん、重野さん、加藤くん

ワンセイルの大澤くん

貴帆を貨物船から降ろした後、膨大な搭載荷物の整理を手伝ってくれた酒井田さんとミエちゃんにも熱烈感謝!!

コロナが収束の方向に向かってはいるはものの第五類になるのは5月の連休明けになりそうなのと、過去の小笠原レースで一考すべき事案があったとかでゴールデンウィーク真っ只中の開催は難しいという、何とも厳しい状況の中でとにもかくにも国内レース初のカテ2のレースとして開催することは良い実績となることは確かだった。

鈴木保夫さんと3月に事前視察と関係団体への挨拶回りに小笠原に出向いた。

鈴木保夫さんと小笠原村父島へ事前視察
鈴木保夫さんと小笠原村父島へ事前視察

意外や意外、小笠原の人々はこのレースの開催を心待ちにしているではないか。

参加艇が少ない場合は中止もありえるなと内心思っていたのだが、帰路の小笠原丸の中での鈴木さんとの会話では、例え参加艇が3艇であってもカテゴリ2のレースを実施したという事実を残す事が重要だという考えで一致していた。

参加艇は一艇一艇増えていったものの連休からズレての開催に期待していたチームが参加を見送ったこともあり6艇で止まったままであった。

このままでは赤字かな・・・

貴帆がレイトエントリーすればカツカツの予算で運営出来るか・・・

Soloかな・・・・話題にもなるだろうし・・・・

第二話 「出会いの連鎖による参戦」

エントリー期限が迫っていた。

まだ船も身体も準備が出来ていない。

何よりも奥様にはもうレースはやらないと話していたので(誓ってはいないのだが)顔色を伺っていた。

自身も小笠原ではレース参戦では無く運営側で勉強をしたかった。

宇田川との出会い

セイルオン &JOSAで支援をしている昨年三河みとで開催されたセイル・オン 第11回 JYM選抜 大学対抗&U25ヨットマッチレースでのこと 。優勝した宇田川丸のスキッパーで470チャンピオンの実績を持つ。

男子クルーを率いて颯爽とレースをする姿に男前のお嬢さんだと印象をもっていた。

桟橋で外洋に興味は無いの?と一声かけたことしか接点はなかった。

小笠原参戦のタイムリミットが近づくなか、ふと宇田川を思い出しメッセージを入れたところ、「興味があります」との回答があり、それではダブルハンドで参戦してみようかとトライアルをはじめた。

第一印象は舵取りが上手いな。パワーは猫パンチ並できっとスタミナは無いな。

二人でダブルハンドならオーパイでSoloレースに出るのと代わらないことになるかも・・・だった・・・

吉富との出会い

彼女が神戸大4年の時に金子純代さんからの紹介で会っている。あれはコロナが始まる直前で男女ミックスダブルハンドのW杯開催が騒がれた時のことだったと思う。

彼女は航海士を目指していたこともあり、普通のヨット乗りよりは航海計器のこと、海図の事、、、当たり前だが理解が早かった。

JOSA企画の200マイル無寄港トレーニングで吉富愛と後にマルセイユでのL30W杯に連れて行った松苗幸希と引率係の私とで大阪湾から和歌山沖まで2オーバーナイトを一緒に走っている。吉富はスピードとしぶとさはありそうでパワーはプーさんという感じだが慣れればOffshoreで相棒にするのは良いかもと思っていた。当時その吉富と男女ミックスダブルハンドW杯を目指すもコロナ禍であった事と、SurvivalTrainingを受講出来る機会が無くNew Zealandのトレーナーにプライベートトレーニングを調整してもらうところまで段取りしたのだが卒業航海旅行だとかで、そのめちゃくちゃな努力も水の泡になった事があった。本人は知らないだろうが・・・

その後はJOSAの理事でサバトレのMedicalトレーナーでもある森村氏のバルトロメのクルーとしてセーリングは続けていたらしく、ある日の夜森村さんから架電あり、小笠原に吉富を乗せてはどうですかね?

あれ?航海士になって世界の海を渡って今帰ってきてるの? 私にはまったく連絡が無いからヨット辞めたのかと思ってたんだけど?

それでは先ず練習にお出でなさいましという流れになっていった。

宇田川とのダブルハンドは少し大変になるなと思っていたので丁度良いというか神様の思し召しか、女子2人を中心にほぼダブルハンドという企画でレースに参戦すれば話題も提供出来てレースの華にもなるだろうと妄想し皆で相談し合意の上レイトエントリーをすることにした。

3人で秘密の会議
3人で秘密の会議

3人での練習は延べで4、5回というところだろうか。

レースに出る前に貴帆の強風時のセッティングを試さなければいけないが、吉富と宇田川とでは経験不足で強風時のテストセーリングが出来ない。

20ノット以上吹きそうなときのタイミングを見て蔵田くんとエイチャン、伊藝くんに手伝ってもらって作業を進めた。特に新しいMediumスピンはマストヘッドからフラクショナルにプラン変更して製作したのでどうしても試しておきたかったのだが、残念ながら満足な強風が吹かなかった。

どうしても?

そう、このセールでのダウンウインドでは艇速が23ノットを超える事もあるからだ。

伊藝くんにはレース直前にもう一度手伝ってもらうことにした。セールトレーニングで呼んだのでは無い、強風時の諸々を試したかったのだが残念ながら風が弱かった。

結局30ノット以上でのテストは全く出来ない状態でレースに臨むことになった。

(第3話に続く)